引っ越しの時、エアコンや家電の移設工事は引越屋のオプションで頼まれる方が大多数だと思います。
引っ越しの見積もりの際に頼めるという手軽さもあり、気軽にオプション契約をしてしまいますよね?
引っ越しを経験されたことがある方で、エアコンの移設工事も引越屋さんに依頼された方の多くが、こう思います。
『こんなはずじゃなかった・・・。』
インターネットの掲示板などを見てみると、こんなことがたくさん書いてあります。
・追加料金が異常に高額で新品のエアコンを買った方が安かった。
・作業員に勧められるがままに20年前のエアコンを分解洗浄に出してしまった。
・工事に来てくれた作業員の態度が悪く嫌な思いをした。
・配管(パイプ)を強引に交換させられて高額な追加代金を支払った。
・夜の7時に作業員が来て工事が夜中までかかった。
・見るからに素人みたいな作業員が来てエアコンを壊されてしまった。
・取付工事に時間が掛かったのに雑で見栄えの悪い取り付けをされた。
などなど、ネガティブな内容ばかりです。
私は長年、引っ越しに伴うエアコンの移設工事業務(移設工事業界)に携わってきました。
だからこそ明かす、引っ越しとエアコンにまつわる衝撃的な内容を告白します。
これは「批判」をしたいのではなく、この業界に根付いた悪しき習慣を少しでも改善したいという思いと、
エアコンに携わる一人の人間として、エアコン工事を望んでいる全てのお客様に気持ち良くエアコンを使ってもらいたい、という強い気持ちでここに記します。
表現上、多少なりとも気分を害してしまうかもしれませんがご容赦ください。
エアコンで一番重要なのは「取付工事」です。
「取付工事」にスポットを当てて記していきます。
最初に、お客様が支払った「エアコン取付代」が実際に工事を担当する作業員に幾ら支払われるのかを公開します。
(現在、どこの引越業者も末端への支払いはほぼ同じです)
【エアコン取り付け】12,000円、これが、お客様が引っ越し業者に支払った金額。
実際に工事を担当する作業員には【2,000円】が支払われます。
差額の【10,000円】は【引っ越し業者】と【工事の仲介会社】が分配します。
ここから分かるように、お客様が【12,000円】支払っていても、作業員は【2,000円】分の仕事しかできません。
【2,000円】といったら現場までのガソリン代と人件費にしかなりません。
駐車場が用意されてることは稀なので、コインパーキングを使ったらほぼボランティアですね。
そこで登場するのが【追加料金】です。作業員はこの【追加料金】を【利益】と考えています。
【基本工事】は【ボランティア】です。
**追加料金の一例**
配管(パイプ) 1m 3,000円 一般的な建物だと4m使用しますので【12,000円】になります。
これは室内機と室外機を繋いでる冷媒管の事です。
移設の際には、劣化や長さ不足が原因で新しいものに交換することが多いです。
つまり、エアコン取り付け代【12,000円】+配管代【12,000円】=【24,000円】が総額です。
当社のようなお客様と直接取引の会社の同じケースでのお値段。
エアコン取り付け代【5,000円】+配管代【8000円】(1m2,000円)=【13,000円】で済みます。(当社の場合)
実に【10,000円以上】もの差が発生します。
これは皆様かなり驚かれます。しかし、これが現実なのです。
他にもエアコン工事(移設)には思わぬ追加料金が発生します。引っ越し業者経由ですと追加料金が割高になっているので、追加が出れば出るほど、お客様は損することになります。
では、何故、引っ越し業者に頼むと追加料金が高額なのか?上記の配管(パイプ)を例にしてご説明します。
1m【3,000円】ですが、これはそのまま取付業者の売り上げになるわけではありません。
【工事仲介業者】にもよりますが、大体マージンを30%~40%搾取します。
つまり【3,000円】を売り上げたら【900円】搾取され【2,100円】が取付業者の売り上げになります。
ですので、一般相場の30%~40%増しの料金がお客様に請求される、という仕組みです。
結果、高額な【追加料金】をとられた、という話になります。
次はエアコンクリーニングの話。
引越業者と業務提携している【工事仲介業者】が独自に「エアコン分解クリーニング」をやっています。
私が知っているだけで3社あります。
これは、取り外したエアコンを工場で分解して綺麗にする。というサービスです。
分解して洗浄するので新品の様に綺麗にピカピカ清潔になります。これ自体はとても良いサービスです。
相場は15,000円円~30,000円です。
しかしながら、上記でも述べたように取り付け作業員さんは【追加工事】が主な売り上げです。
言い換えれば【追加工事を上げてナンボ】の世界ですので必要以上のセールスをします。
クリーニングの必要のない綺麗なエアコンをクリーニングするようセールスする。
今にも壊れそうな20年前のエアコンを「まだ使える」と言ってクリーニングを勧める。
など、悪徳スレスレのことがに日常茶飯事のように行われているのが現状です。
これは、取り付け作業員さんが悪いのではなく、業界全体に広がる「ダンピング価格」(投げ売り価格)が招いた結果です。
このままではいずれ移設工事関係の仕事をする工事業者がいなくなるのではないかと私は思います。
作業員の「質」の問題。
ここまでお読みいただいて分かるように、末端の工事業者は条件が相当厳しい状況にあります。
特に、長年エアコンの工事をやっている業者さんからすれば、移設工事業界の金額設定が昔の3分の1程度にまで落ち込んでしまっているので内心穏やかではないと思います。
【件数台数こなしてナンボ】の世界になってしまっているので、一件一件に費やせる時間が限られてしまいます。
いちいちお客様の要望をじっくり聞いたりする時間も惜しかったり、予定時間を超えないように手間を省いていかに早く終わらせるか、になりがちです。
これはしょうがない事です。
彼らはボランティアではなく、生活がかかった仕事だからです。
その中で多少なりともお客様への配慮が欠けたり、マナーやモラルが欠損してしまうこともあるかも知れません。
また、価格設定が底辺の為、工事に関して基本的な約束事や取決めが無いのが移設工事業界の闇です。
言い方を変えれば
【とりあえずエアコンが付いていれば設置済みとしてみなされる】
と、いうことです。
見栄えが悪かろうが、手抜き工事だろうが、ぼったくりだろうが、海外製の低質な材料を使おうが、
使いまわしの材料を使おうが、違法工事だろうが、設置すれば工事完了なのです。
工事のクオリティは関係ないのです。
これってかなり恐ろしい事ですよね。
でも、これが現実なのです。
そんな過酷な業界だからこそ人材も育ちませんし、個々の技術も発達しません。
向上心のある業者さんは移設業界をやめていきます。
実は、当社もそのひとつです。
当社の場合、向上心もそうですが「お客様のために仕事をしたい!」という想いが一番強かったと記憶しております。
【台数こなしてナンボ】の世界では
【誰のために仕事をしているのか分からなくなる】のです。
お客様とじっくり話し合い、お客様のご希望に沿っていて、尚且つお客様が長期的に快適に過ごせるような施工を目指しています。
まとめ。
引っ越し時のエアコンの取り付けは【専門業者】に直接依頼する。
依頼する際にはその業者の方針を見定める。「量より質か」「質より量か」
(遠方への引っ越しの場合は引っ越し先周辺の業者を前もって調べておくといいかも知れません。取外の工事は引っ越し業者にオプションで依頼してください。)
信頼できる業者を探すのが大変かも知れませんが、少しの手間で結果的に損をするかしないかに大きく影響します。
また、長期的に安心してエアコンを使用できるか出来ないかも変わってきます。
2016.04.07